蜷川幸雄

2021年02月26日

25日は読売演劇大賞!贈賞式でした


 
読売演劇大賞優秀作品賞を受賞した
「天保十二年のシェイクスピア」を観覧したのは昨年の2月‥
あらから1年が経ちました。
新型コロナウイルス対策により
29日の東京公演千穐楽目前の27日のマチネーをもちまして
公演は中止となりました。

カーテンコールの挨拶では高橋一生さんが
心の底から無念という心情を吐露し
お芝居は言わば娯楽と言ってしまえばそれまでの世界ですが
お芝居の場所は想像する力を齎し
豊かな心づくりを共有する場所だと思っている
という主観を述べられたことを思い出します。

演出の藤田俊太郎さんは「天保十二年のシェイクスピア」
「NIKE」「VIOLET」で読売演劇大賞最優秀演出家賞を受賞しました。



藤田さんは2005年唐沢寿明さん主演の
「天保十二のシェイクスピア」の現場に蜷川幸雄さんの助手として
携わっていたそうです。
この時はまだ1年目でただ一生懸命稽古場へ通い
何かできることはないかと必死で
あまりにも辛かったので記憶にないくらいだそうです。
その後、蜷川さんの現場で助手として10年過ごし
とうとう2020年の「天保十二年のシェイクスピア」を自ら
構築するに至ったのです。

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先日NHK朝イチのプレミアトークに
前回の朝ドラ「エール」で寡黙な馬具職人、岩城新平役を演じた
吉原光夫さんがご出演されていました。

この時藤田俊太郎さんがVTRゲストでした。

藤田さんは演出家としてメジャーデビューをした作品
2014年「ザ・ビューティフル・ゲーム」で
吉原光夫さんと出会ったそうです。

現在でも演劇少年のような純粋さとひたむきさを醸す藤田さんは
その当時、情熱と気持ちが先行してしまい、うわ滑りしていました。
一方通行な感覚的表現で役者に接したため
言いたい事が皆に伝わっていなかったのです。

場の滞りを感じ取った吉原さんは
「藤田の言う事わからない人どれくらいいる?」と
皆に聞いたら何人も手を上げたそうです。

この時吉原さんは「そうだよなあ‥だけど僕ら藤田を信じる」と
言ってくれたそうです。
足踏みしている状態の場に流れを齎してくれたそうです。

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「吉原さんがいなかったら僕は演出家を続けてこなかった。」と
藤田さんはおっしゃっていました。

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吉原光夫さんは藤田さんの良き理解者でありますし
本質を見抜いているだけあり忌憚のない
藤田像を述べられていました。

改めまして藤田俊太郎さんの最優秀演出家賞と
「天保十二年のシェイクスピア」優秀作品賞おめでとうございます


「天保十二年のシェイクスピア」からは宮川彬良さんが
優秀スタッフ賞を受賞されました。

あと‥私の大好きな女優さん池谷のぶえさんは優秀女優賞でした。








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2020年10月25日

シェイクスピアのことばに支えられる

10月24日(土)午前4:05放送のラジオ深夜便
「私の人生手帖」を私は聞いていました。
この日のゲストは翻訳家・演劇評論家の松岡和子さんでした。

松岡さんは平成5年1993年から始めた
シェークスピア全37作品の翻訳の完訳を
女性として日本で初めて目前に控えています。

平成10年からは彩の国さいたま劇場で蜷川幸雄さん演出によります
シェークスピアの全作品の舞台化を目指す
壮大なプロジェクトがスタートしたのですが
その翻訳を松岡さんが手掛けたそうです。

今回のお話で私は特効薬のような「ことば」を頂きました。

現在の母の病状の場合
リスクの高いカテーテル治療を決行してしまって良いのか?
転院せずにあのまま退院したほうが良かったのか?‥など‥
自分でも以外なほどヘロヘロ状態になっている最中でした。

しかしその「ことば」を聞いて
ヘロヘロ状態がスーっと薄まるような感じがしたのです。

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「雀一羽が落ちるにも天の摂理が働いている。

今来るなら後には来ない
後で来ないなら今来るだろう

今来なくてもいずはれ来る

覚悟が全てだ。」


書かれてから400年以上経つ現在でも上演され続けられている
世界最高の劇作家シェークスピアが描いた「ことば」により
松岡さんは看護や介護など、人生の岐路で支えられたそうです。

上記のことばをハムレットが
どのようなシチュエーションで発っしたのかと言いますと

ハムレットの殺害を目論んだ国王は
オフェーリアの兄であるレアティーズの復讐心を利用し
ハムレットとレアティーズのフェンシングの試合を催したのです。

レアティーズの持つ剣は先を鋭くした禁じ手である上
剣先には毒を塗り、その上ハムレットが喉を潤す事を前提に
毒杯まで用意するという、周到な準備の上に仕組まれた
親善試合とは名ばかりの、悪意の元開催された試合でした。

この試合に挑む直前に嫌な予感を覚えたハムレットでしたが
前兆など気にしてはいられないと放ったのがこの「ことば」なのです。

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松岡和子さんが人生において一番フニャフニャになった時
それは御主人が食道がんを疑われた時だそうです。

検査をして悪性であったら‥進行度合いはどの位なのか‥
手術をするのかどうか?など、何もわからず不安な時に
ハムレットの「覚悟が全てだ」が出て来たそうです。

「死はいつ来るのか?死はいずれ来るんだ!だったら覚悟しておけば
いつ死んでも同じじゃないか」と思えたそうです。

手術を施す予定だったそうですが
ご主人が誤嚥性肺炎になってしまい
結局在宅看護となってしまったそうです。
この時も「覚悟が全て」を毎日言っていたそうです。

吸引器でガ-っとご主人への吸引を施し、オムツ交換をし
隣室の書斎で仕事をするという状態だったそうですが
この翻訳のお仕事も気持ちの切替ができて良かったそうです。

「最悪なことが起きても、自分はちゃんと立っていないといけない。
この言葉は今も私の心棒として強さを増している」
と松岡さんは言います。

私、ふっと思ったのですが教養というのは
自分の危機や岐路をできるだけ円滑にする
「ことば」を持つ事でもあるのかなとつくづく想いました。
松岡さんはことばを扱うお仕事だったわけですが
やっぱり日頃から読書や人とのお付き合いで見聞を広め
多くの「ことば」を獲得しておくことが大事ですね‥





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2020年02月24日

天保十二年のシェイクスピアを再び観て思った事

天保十二年のシェイクスピアの初見は
公演2日目2月9日のマチネでした。

そしてあれから約2週間経ちました
一昨日2月22日のマチネを観覧してきました。

前回はオペラグラスで一生さんの三世次を
興奮状態で見漁っていたと言うこともあり
舞台の全体像を掴み取る余裕はなかったと自覚しています。

しかし今回はのめり込んで観ることができました。
笑ったり、涙ぐんだりしながら
3時間35分という上演時間が2時間位にしか感じませんでした。



私が天保十二年のシェイクスピアの作者井上ひさし氏を認識したのは
NHKで1960年代に放送された「ひょっこりひょうたん島」という
人形劇の原作者というところからです。

当時井上氏はメディアでの露出度が高かったような記憶があります。
幼かった私はひょうきん顔のおじさんという印象をもちました。
お笑い系の方?と誤解していた時期が少しあります。
後にこまつ座の存在を知り熊倉一雄さんとの関係も知りました。

しかし井上ひさし氏の作品を手にとり読んだことはありません。

この天保十二年のシェイクスピアという戯曲の存在も
今回高橋一生さん出演という事がなければ知り得なかったと思います。

私自身の舞台の観覧記憶と言ったら
中学生時代のミュージカル「ヘアー」と
20代の頃京王プラザホテル前の
大きなテント小屋での「キャッツ」と
その他数えても両手で足りる位乏しいものです。

ところが今回この舞台を観覧することになり
もし私が母の介護と言う役目を担っていなければ
際限なく通っていただろうと思います。
それほど面白く舞台という分野に目覚めてしまったと思われます。


天保十二年のシェイクスピアは音楽劇とあるだけに
舞台後方では作曲の宮川彬良氏自らが加わっての
生演奏という贅沢さです。
この音楽がとってもセンスが良く
まるで井上氏が意図していたかの如く
心地よい音階と共に躊躇のないことばが
私の耳に胸に染み込んでいくのを感じました。

ブルース、ボサノバ、昭和歌謡と曲調にも富んでいて
特に私は「賭場のボサノバ」
「もしもシェイクスピアがいなかったら」は
すでに鼻歌になってしまうほど染み込んでしまいました。

三世次の「ことばことばことば」きじるしの王次の「問題ソング」
などは井上氏の歌詞の意味深さが聞きながら観ながら伝わってきます。

音楽を聞きながらダイナミックな舞台装置にも目が奪われます。
舞台観覧の乏しい初心者なのですが斬新な舞台装置だと感じました。



特に鏡仕様の装置は観客をも映し出すというもので
舞台上の鏡に観客席が映された瞬間
なぜか気恥ずかしさと後ろめたさを感じてしまったのは
なぜなのでしょうか

自分を自覚できなくなっている三世次が
鏡を観て自分の醜さを改めて自覚し驚き嘆いたように
舞台の中の世界を他人事だと思うなよという
まるで挑戦状を突きつけられたような気がしました。

役者さんは言うまでもなく精鋭揃いで
2005年の蜷川幸雄版でも隊長役を務められた木場勝己さんは
実に素晴らしく語り口調を変化させながら
観客を舞台を引っ張っていきます。
プロローグで昨今の時事ネタを交えながら述べ
草草に観客を引き込みながら舞台へと誘う様はお見事でした。

梅沢昌代さんはいわずもがな大活躍の方ですし
辻萬長さんしかり、ミュージカル界の星浦井健治さんは
きじるしの王次で暗黒の三世次の対岸に居る
正に輝く星のような存在の役でした。

登場とともにキラキラとした
存在感のある役者さんであることがわかります。
きじるしの王次の登場により
三世次の色がますます暗く黒く淀んでいくのです。

そして今回の佐渡の三世次は高橋一生さんです。
歴代の三世次は川上隆也さん、唐沢寿明さんが演られています。

一生さんの三世次は哀愁を漂よわせながらも
鋭い目つきが獲物を狙うが如く次から次へと
刃物より大量殺傷することのできる
「ことば」と言う武器を操り出世していきます。

自分の醜い顔と体、抱え百姓という身分の出である三世次は
自身の存在を嫌と言うほど自覚していました。

だからこその、三世次の生き方なのだと感じました。

三世次は自身の存在を周りから蔑まされ
優しく愛された事がなかったのでしょう
世の中への捉え方が歪むのも無理はないように思いました。

三世次が「全てを相対化した時俺は初めていくのだ」と
嫌がる遊女を相手に行為をしながら歌った時は
自身を自覚する三世次がそこに居たのです。



しかし三世次は出世し代官になったは良いのですが
自分が見えなくなるのです。

阿漕な年貢の取り立てをし、百姓出身の三世次が
百姓の期待を裏切るのです。

結局三世次は好きな女に自分自身を突きつけられ
しかもその女と交わる事もなく
自身と同じ出身の百姓達にとどめを刺され
最期を迎えます。

私は舞台を観ながら
「ああ!三世次!これで楽になるね!もういいよね」
と思うのですが‥

多分そんなに簡単なものでは無いのかもしれません。

私は不勉強な人間でシェイクスピア作品は「ロミオとジュリエット」
「ハムレット」「リア王」位しか読んだ事がありません。
シェイクスピアのパロディであることを全て気づいたわけではない
この私でも充分楽しめる舞台であり
しっかりとした骨組みの戯曲である事は言うまでもないのですが
こうやって思い出してみますと三世次の一代記というだけでは
腑に落ちない何かを感じてしまうのです。
まあ捻くらなくてもいいのでしょうが
まだ私には気がつかない何かがあるはずです。

「天保十二年のシェイクスピア」という戯曲を研究したくなります。
井上ひさしさんの本も読んでみたくなります。

又観たい‥





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2020年02月05日

天保十二年のシェイクスピア!いよいよです!

「天保十二年のシェイクスピア」が
いよいよ2月8日(土)初日を迎えます
東京公演は日生劇場にて29日(土)まで
大阪公演は3月5日(木)~10日(火)まで
梅田芸術劇場メインホールで上演されます。



待ちに待った高橋一生さん主演の舞台です。
一生さんにとって舞台はレディエント・バーミン以来4年ぶりです。

「天保十二年のシェイクスピア」は
江戸末期の講談宝井琴凌作「天保水滸伝」に
シェイクスピア全作をおとしいれ井上ひさし氏が描いた戯曲です。

出演者は浦井健治さん、唯月ふうかさん、辻萬長さん
梅沢昌代さん、木場勝己さん、玉置孝匡さん、土井ケイトさん他

出口典雄氏演出で1974年に初演
2002年には劇団☆新感線いのうえひでのり氏演出
2005年には蜷川幸雄氏演出で上演されました。

今回は蜷川幸雄氏の演出助手を努めていた
藤田俊太郎氏が演出を担当し音楽劇として上演されます。




2005年の「天保十二年のシェイクスピア」の時の藤田氏は
助手一年目ということもあり現場について行く事もできず必死で
一生懸命稽古場へ通い何かできる事はないかと探し
あまりに辛くてその年の記憶はほとんど無いそうです。

その後10年間蜷川氏の助手として氏の仕事を間近に見てきました。

井上氏の描いたテーマ、趣向から外れる事なく自分独自の
「天保十二年のシェイクスピア」ができるはずと感じているそうです。

話は江戸時代末期の天保年間
旅籠を仕切る年老いた侠客の身体譲りが発端となり
3人の娘を巻き込みながらの縄張りをめぐる骨肉の争いを
シェイクスピアの名場面を盛り込み描かれます。
高橋一生さんが演じる佐渡の三世次は
「リチャード三世」「オセロー」など
シェイクスピア悪のキャラクターを一手に引き受けて登場します。

藤田氏はこの戯曲はたくさんの登場人物の群像劇だと思わせ
実は佐渡の三世次の一代記であることが明らかになる
と述べられています。(アクトガイド2020Season5より)

結局陰で人を操りたくさんの登場人物を
手中に収めていた三世次ですが上り詰めることはないようです。
「三世次」と言う名の中にリチャード三世の名称を有してはいるものの
『次』という名の一部から『王』ではない
ということが端から示されています。

天保十二年のシェイクスピアに関する資料を何冊か読み
当初この戯曲についての評判は紆余曲折があった事がわかりました。
しかし着地点としてはシェイクスピアのパロディを
いまや越えたところにあるのではと感じました。

実は2005年の蜷川氏演出の舞台を知り合いが観ていまして
シェイクスピア作品は「ロミオとジュリエット」くらいしか知らず
観覧したそうですが特に困ったことは何もなかったそうです。
シェイクスピアのパロディ抜きに観たとしても
骨組みのしっかりとした戯曲でとても楽しめたそうで
今でも記憶にしっかり根付いているようです。
もちろんシェイクスピア作品に精通していれば
クスッと笑う場面も多くなろうかと思われますし
奥深く何倍も楽しめること間違いなしだと思います。

とても楽しみにしていることは
この戯曲は濡れ場に物語を左右する方向性があるようで
今回はどういう表現になるのか今からワクワクします。





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2019年03月08日

藤田俊太郎さん!BS1スペシャル!


演出家・藤田俊太郎さん。
この方のことについては以前から
高橋一生さんのスケジュール確認のために覗く
舞プロモーションのページで拝見していました。

もともと蜷川幸雄さんが所属しておりましたのが
この舞プロモーションです。

この蜷川さんの下で修行したのが藤田俊太郎さん38歳なのです。
お年が一生さんと同じです。

彼が単身ロンドンに渡りイギリスの俳優とスタッフだけを使い
英語の新作ミュージカルを演出したそうです。
もがき苦しみながら創り上げた舞台「ヴァイオレット」

その奮闘を追うBS1スペシャル3月12日(火)午後9:00からの
”ミュージカルの聖地に挑む”~演出家・藤田俊太郎ロンドン進出~
が放送されます

2020年2月高橋一生✕浦井健治出演の日生劇場ミュージカル
「天保十二年のシェイクスピア」の演出は藤田俊太郎さんです

すっごく楽しみです



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